全電子混合基底法を用いた第一原理計算プログラムの開発


  全電子混合基底法は一電子近似の範囲で波動関数を平面波(PW)と数値的原子軌道関数(AO)の線形結合で表す第一原理計算手法です。 この全電子混合基底法は原子に限らず分子・クラスター・結晶など様々な系に適用可能です。 また、高次の摂動計算は連続状態である非占有軌道、すなわち広がった状態も必要とするので、局在基底のみと比べて平面波の使用は完全系を形成するのに際して非常に有効です。 密度汎関数法(DFT)に基づく局所密度近似(LDA)計算プログラムの開発から始まり、励起状態を取り扱うための時間依存密度汎関数法(TDDFT)による計算も可能となりました。 さらにはLDAを超えたGW近似、そこからBethe-Salpeter方程式を解いて行うスペクトル計算も行えるようになりました。 最近ではLDAではなく、ハートリー・フォック近似(HFA)計算プログラムも開発し、そこから出発するGW近似、2次摂動計算もプログラム上可能となりました。 さらなる目標としては、自己無撞着に高次の摂動計算を行うことが挙げられます。 本研究室ではこの全電子混合基底法による様々な計算プログラムを開発し、実際の物質に適用して高精度近似計算を行なっております。

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カーボンナノ物質の電子構造計算

一次元ピーナッツ型フラーレンポリマー


  フラーレンC60の薄膜に電子線を照射することでフラーレン同士が重合して形を変え、1次元ピーナッツ型フラーレンポリマーが生成される。また、その1次元ピーナッツ型フラーレンポリマーが金属的な電気伝導性を示すことが論文によって報告されている。しかし、どのような重合形状を持つ1次元ピーナッツ型フラーレンポリマーが金属的になるのか、何故それらが金属的な性質を示すのか、明確な原理が解明されていない。
  大野研究室では、様々な重合形状を持つ1次元ピーナッツ型フラーレンポリマーの構造モデルを用意し、それぞれの構造に対して密度汎関数理論に基づく第一原理計算を行い、バンド構造を求めた。その結果から、1次元ピーナッツ型フラーレンポリマーの電子状態と幾何学的構造の関係を検討した。
  本研究では第一原理計算を用いた電子状態の解析を行い、金属性・半導体性・半金属性の1次元ピーナッツ型フラーレンポリマーが得られた。1次元ピーナッツ型フ ラーレンポリマーの電気伝導性について議論するために、6員環の特徴に関して2つの項目に注目した。1つ目は、負のガウス曲率部分にも6員環が存在し、隣り合う6員環が単位胞内で左端から右端まで繋がっていることである。2つ目は、各々の6員環が平面を保ち大きく歪んでいないことである。これら2つの条件を同時に満たすことで、1次元ピーナッツ型フラーレンポリマーは金属性になるとわかった。1次元ピーナッツ型フラーレンポリマーに含まれる6員環の形状や特徴を見極めることで、より厳密に電気伝導性を判別できるという新しい知見を得ることができた。今後の研究として、様々な形を持つ1次元ピーナッツ型フラーレンポリマーの電気伝導シミュレーションを行い、本研究の計算結果との比較を検討している。
参考文献: Y. Noda and K. Ohno, Synthetic Met.161, 1546 (2011).


カーボンクラスターを内包するカーボンナノチューブ


  カーボンナノチューブ(CNTs)は、1991年に日本で発見された非常に細長い円筒状の物質である。ナノチューブはさまざまな新しい性質を持ち、ナノサイズの電子デバイスなどの新素材として注目を集めている。
  当研究室では、Feや線形のカーボンクラスターなどについて、ナノチューブとの相互作用を第一原理の立場から研究を行っている。例えば、一般に水分子やフラーレンはナノチューブ内に内包されることが知られている。近年、我々の計算により、線形のカーボンクラスターは自発的にナノチューブに内包されることがわかった。この結果はナノチューブ内の空洞を使った分子輸送の可能性を示唆している。このようにナノチューブはさまざまな可能性を秘めた物質である。
参考文献: Riichi Kuwahara, Yohei Kudo, Tsuguo Morisato, and Kaoru Ohno, J. Phys. Chem. A 115, 5147 (2011).


時間発展ダイナミクスのシミュレーション

人工光合成への挑戦


  大気中への二酸化炭素排出量の増加が問題視されている中で、光合成に関する研究、特に植物の手を借りない光合成への実現に向けて人工光合成が注目されている。 人工光合成の定義は様々であるが、一つの例として上図のような二酸化炭素から蟻酸を生成するような反応を進めるための光触媒の実験研究が進められている。しかし、この化学反応過程は十分に明らかになっていない。
  本研究室では平面波と原子軌道関数の両方を基底関 数としたオリジナルな全電子混合基底第一原理動力学 プログラムを有するため、これを用いて二酸化炭素の還元反応過程の計算機シミュレーションを行っている。


その他の研究テーマ

新規熱電物質の理論設計


  Thermoelectric materials are able to convert a temperature difference to the movement of electric carriers effectively, which can be used to generate electricity from heat. Recent years the thermoelectrics for energy conversion application have witnessed remarkable growing interests. The energy conversion efficiency is determined by the magnitude of the dimensionless figure of merit (ZT) which is a function of the Seebeck coefficient, electric conductivity and thermal conductivity.
  In order to design high ZT thermoelectric materials, it is essential that the electronic and phononic structures of various compounds should be calculated with high accuracy. We investigate the electron and phonon transport properties by using a first principles approach.